経団連は、就活の日程ルールを廃止することを決めました。「徒弟制度的な育成計画では求められる水準に届かない」「外国人材や留学生の採用が困難」「スキル優先の欧米企業との競争に勝てない」として、新卒一括採用のあり方にも問題を投げかけています。終身雇用とOJTを前提に、採用時に担当業務や配属先を限定することなく、会社が業務と配属を指示する日本独自の「新卒一括採用+メンバーシップ型雇用」が時代に合わなくなってきたので、世界標準である「通年採用+ジョブ型雇用(限定した業務内容に応じた市場価格を支払う)」に切り替えざるを得ない時代になったということでしょう。 留学生を雇用したことのある企業であれば、痛いほど身に沁みているように、彼らのマインドセットは日本人とは異なります。また、若い日本人も、年配の日本人とはかなり違います。人事制度を大胆に改革しなければ、早晩、組織運営に支障をきたす企業もでてくるでしょう。「正社員という身分の一員になり、滅私奉公することで将来の出世という対価を得る」という仕組みは、すでに機能しなくなっているという現実を心底理解すべきです。 【Timely Report】Vol.307(2018.12.11)より転載。
英語を教えて収入を得たい外国人2200人と、教わりたい日本人をマッチングする学習アプリ「フラミンゴ」を運営しているベンチャー企業があります。経営者は、「日本は外国人にとって生活しづらい。留学生の中には、睡眠時間を削って、時給が高い深夜バイトで食いつないでいる人もいます」と語り、時給1000円、週28時間でフルに働いたとしても11万2000円しか稼げない現状を批判。「日本で暮らす外国人がもっと稼ぐことのできる場をつくりたい」と思って起業したようです。英会話教室の講師だと時給1500~2000円ですが、『フラミンゴ』だと3000~4000円の時給を得られると言います。 素晴らしい話に見えますが、講師が個人事業主扱いの場合、「経営・管理」以外の外国人は資格外活動違反になりますし、雇用契約の場合でも、「技術・人文知識・国際業務」だと資格外活動やハローワークへの届出が問題になり得るほか、「留学」でも週28時間超や届出違反が心配になります。つまり、「フラミンゴ」を展開することは、不法就労助長罪に問われるリスクがあるのです。警察や入管に気付かれないことを祈るのみです。 【Timely Report】Vol.105(2018.2.21)より転載。
安倍政権は「外国人労働者の受入拡大」に踏み切りました。世論は、総じてポジティブですが、攘夷派はいずれ反撃に出ます。 現時点の反対論は、「すぐ外国人労働者に頼るのは安易だ」「人口減少対策として外国人に依存するのは問題の先送りだ」「根本的な問題は解決しない」「日本の都合だけで人数を確保できるか」「外国人労働者の増加は限定的」という「問題は解決しない論」と、「移民受入は実質賃金を引き下げる」「移民を入れると企業の生産性が上がらない」「人手不足だからこそ労働生産性が上がる」という「人手不足は受容すべき論」が主流。これらは、雇用現場で生じている諸問題を解決しないので、大勢を占めることはないと思います。 しかし、「外国人をモノのように扱う発想は危険だ」「社会を大きく変容させ得る」「違いを乗り越えなければ対立や分断が生じる」という文化論に、「医療タダ乗りという現制度の穴をふさぐことが先決」「移民たちの社会保障費用を負担するのは日本国民だ」という正論が組み合わさると、感情的な排斥論が加わって、かなり強烈な逆風になることもあり得ます。要注意です。 【Timely Report】Vol.211(2018.7.26)より転載。
「技能実習」の延長線上に「特定技能」を設計した時点から危ぶまれていたことではありますが、法案審議の中で「技能実習」の筋悪さが際立ってきました。しかし、不可思議なのは、「技能実習」における労働基準法違反は責め立てるのに、「技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)」違反を咎める声がないということです。 技能実習法第9条第1号は「修得等をさせる技能等が、技能実習生の本国において修得等が困難なものであること」と明記しています。また、技能実習法施行規則第10条第2項第1号のイは、「同一の作業の反復のみによって修得等できるものではないこと」を「技能実習の内容」の要件にしています。 しかし、「技能実習」のほとんどは、同一の作業の反復のみによって修得できる技能であり、母国でも修得可能な代物。試験制度によって誤魔化してはいますが、インチキな実態は関係者全員が熟知しています。法務省からすれば、「それは所管官庁に聞いてくれ」という逃げの一手なのでしょうが、こんなあからさまな法令違反を黙認しながら「法務省」とは恐れ入る限りです。 【Timely Report】Vol.305(2018.12.7)より転載。
11月下旬あたりから不法就労の摘発が立て続けに報じられています。入国管理法違反(不法就労助長・不法残留)の疑いで、三重県でスナック店を経営している台湾人女性とタイ人女性ら3人逮捕されたほか、埼玉県でもエステ店の中国人経営者ら女性3人が入国管理法(不法就労助長・資格外活動)で摘発。栃木県でも、不法就労助長の疑いで風俗店従業員の男性が逮捕されています。また、埼玉県では、解体業者の社長と中国人の妻が、不法滞在している中国人男性を解体工事現場などで働かせたとして逮捕されました。 年末にかけて、入管と警察は、「年末特別警戒」の体制に入り、即時摘発のモードに入ります。この時期は、アルバイトが路上で職務質問されたり、泳がされてガサ入れされるリスクが高くなるので要注意。10月31日には、福岡県でベトナム人留学生が、留学の在留資格で滞在しながら教育機関に在籍せずにアルバイトをしていたとして資格外活動の疑いで逮捕されましたが、一蘭の場合、類似の逮捕が切っ掛けで本部に家宅捜索が入りました。年末にかけて、在留カードや通学状況を再確認することをお勧めします。 【Timely Report】Vol.304(2018.12.6)より転載。
外国人労働者の受入拡大に備えて、新たな「日本語能力テスト」が導入されます。「職場で円滑に意思疎通する実践的な力」を重視するという名目で、電話応答やスケジュール確認など仕事で使用する語彙や表現を出題し、外国人の受入条件として活用する模様です。理屈はこねていますが、要するに、現在の「日本語能力試験」が実用的でない(難しすぎる)という批判に応えたのでしょう。興味深いのは、日本語能力テストを所管するのが「国語施策・日本語教育」を担う「文化庁国語課」ではなく「外務省」だということ。「文部科学省(文化庁)」の凋落が表面化してきました。 ただし、要求すべき日本語レベルの設定や在留外国人に対する日本語教育は、国の将来を左右する最重要事項。霞ヶ関の権力争いで決めてよい事項ではありません。ロシアでは居住権を獲得するために、ロシア語とロシア史とロシア法の試験があると言います。日本では「国語=日本語」と定めた法律すらありません。緩和を求める業界に媚びず、国家百年の計のために真剣に対処する組織が必要です。本来ならば、「入国管理在留庁」の出番なのですが・・・。 【Timely Report】Vol.266(2018.10.12)より転載。
外国人労働者の受入増に対して、「労働需給が緩和されるから反対」という声が散見されるようになりました。大別すると、①「人数が増えると賃金が下がる」という素朴な「労働需給論」、②「生産性の低い企業は破綻すべき」とする「破綻推進論」、③「AIやロボット化で人手不足は解消される」とみる「AI万能論」に分かれます。これらの論者の過ちは、「賃上げ➡消費増➡売上増➡利益増➡賃上げ」という経済の好循環を思い描いており、賃上げが現状打破の端緒になるとみていることです。しかし、ほとんどの経営者は、「賃上げ➡消費増」という経路を信じていません。少しでも値上げすれば、売上が激減するという厳しい現実に直面しているからです。 実際に起きている企業行動は、「店舗減・時間減・人員減➡正社員の賃上げ回避・アルバイトの賃上げ対応」という縮小均衡。韓国と同じです。もしも、技能実習生や留学生の流入による人手不足の緩和がなければ、とうの昔に景気は腰折れしていたはず。縮小均衡の中でAIやロボットに投資する企業が過半になることなどありません。机上の空論で経済政策を語るのは危険です。 【Timely Report】Vol.19(2017.9.8)より転載。
入国管理法改正案を巡り、外国人住民の多い太田市や大泉町など全国15市町で作る「外国人集住都市会議」は、山下法務大臣宛てに多文化共生の推進を求める意見書を提出しました。「生活者としての支援」という視点から、日本語教育の支援、社会保険の加入促進、共生を推進するための「外国人庁」の設置などを求め、「外国人は労働者であるとともに生活者であることが十分に認識されない中、中長期的な共生施策を伴わない外国人材受け入れは地域社会に大きな混乱を招く」と警告しています。 「人(外国人労働者)を入れて終わりにされると、尻ぬぐいをするのは我々(自治体)。かかるコストは市民の税金。入れた人(国)が尻までぬぐうのが筋だ」と主張し、「どのぐらいの規模で新たに外国人がうちの自治体にくるのか。報道で断片的に情報は入っているが、何も提示されていない中で、国に先んじて準備を進めることはできない」と愚痴をこぼしたくなる気持ちも分かります。スカスカの法律を通し、政省令は「入管に丸投げ」で、共生施策は「自治体に丸投げ」というのでは、近い将来、混乱するのは必至です。 【Timely Report】Vol.302(2018.12.4)より転載。
全国のハローワークで仕事を探す人1人当たり何件の求人があるかを示す有効求人倍率は、2017年7月に1.52倍となり、バブル期の1.46倍を超え、1974年2月以来43年5カ月ぶりの高水準となりました。2.8%を記録した2017年7月の完全失業率においては、女性の失業率が1993年5月以来の低水準。こうした中、アルバイトの時給は、前年より3%程度上昇しています。 少なからぬ企業は、将来の人手不足を見越して、長期で雇える正規社員の雇用を拡大しており、常用雇用は前年比+3%近くで増えています。しかし、働き盛りの日本人は年間60万人近く減少しており、日本人だけで事業を運営することには自ずと限界があります。年間60万人減少するという事実は、毎日1700人の人手不足が発生することを意味しており、人手不足で苦しむ日本企業が日々1700社も生まれることを示しています。 稀代の人手不足を乗り切るためには、外国人材の活用が不可欠です。外国人労働者を受け入れるべきという論調も目立ってきました。外国人材を巧みに活用できる企業だけが生き残る時代がやってきたのです。 【Timely Report】Vol.19(2017.9.8)より転載。
入国管理法改正案は衆議院を通過しました。自民党議員ですら「いくらでも問題点は出てくる」と自白するスカスカの内容です。山下法務大臣は、特定技能1号で求められる「相当程度の知識または経験」を、「監督者の指示を理解し、正確に業務を遂行することができる、自らの判断で業務を遂行できる能力」としましたが、具体的な説明を求められると、「所管省庁が緊密に連絡を取り合った上で今後決めていく」とかわしました。経団連が求める「判断基準の明確化」や「プロセスの透明化」は無視された形です。 幅広い裁量権を現場で振り回している入管に詳細の決定を委ねれば、政省令もスカスカになることは目に見えています。官邸の指示で新設した「経営・管理(4ヶ月)」すら運用で葬り去ってしまう兵たちです。政治圧力で「特定技能」が新設されれば、その一方「留学」や「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」の解釈を厳格化して、受け入れを勝手に絞り始めるでしょう。その兆候は、審査の現場に既に表れています。入管審査の実態を無視した議論を続けても現状改善には何ら役立ちません。改悪に終わる可能性大です。 【Timely Report】Vol.301(2018.12.3)より転載。
2017年9月11日、トルコにある米国総領事館の前でシリア難民が、母国で過激派組織「イスラム国」との戦闘に巻き込まれている住民の救出とアサド大統領の退陣を訴えました。シリアは、2011年、アサド政権が民主化を求める市民のデモを弾圧したことを切っ掛けに武装勢力との内戦に突入。反アサド派に外国から過激派が加わる一方で、「イスラム国」が支配地を広げるなど混乱を極めています。逃げる人々の波は、2015年「欧州難民危機」となって世界を揺るがし、ドイツは、2015年だけでシリア難民89万人を受け入れたといいます。それに対して日本は、5年かけて留学生150人を受け入れるという方針を公表し、世界中から失笑を買いました。 じつは、入国管理法は、「永住者」としての「難民」を受け入れられない体系になっているので、苦肉の策として「留学」での受入にした背景があります。一度、他の在留資格で受け入れた後に難民申請をすればよいという建て前なのですが、日本においてシリア難民が認定されたのは7人。500万人を超えるシリア難民の総数と比べると、コメントのしようがありません。
l 2025年に介護職が34万人不足するため、「特定活動(EPA)」「介護」「技能実習」という在留資格に加えて、「特定技能」が新設されます。「技能実習(介護)」では、9割のEPA受入施設が日本語能力試験N3以上を求めたことを受け、「入国時N4・1年以内N3」という基準を定めましたが、これが大不評。ベトナム政府は「日本に行っても1年で帰国となると社会問題になる」として消極的。人手が集まらない現場は「言葉が通じなくても行動で示してくれればいい」「大切なのは心だ」として、日本語基準の緩和を求め始めました。政府は、N3に到達できなくても、引き続き在留できる仕組みを検討。元々、「特定技能」は、技能実習修了者の日本語試験を免除する方針です。 l しかし、日本で生活するなら日本語は必須。大過なく外国人を受け入れていくためにも、一定の日本語力は不可欠であり、日本語学習を支援する政策が大切です。厳しいかもしれませんが、長い目で見れば、「N3」というハードルを下げるべきではありません。一定水準の日本語力を持っているのに帰国している留学生の就労支援を拡充する方が先決だと思います。
l 山下法務大臣は、「悪質な社会保険料の滞納者に対しては在留を認めないことを検討している」と述べ、在留期間の更新を審査するための指針を改定する意向を示しました。現行のガイドラインは、許可・不許可の考慮事項として「雇用・労働条件が適正であること」「納税義務の履行」などを挙げ、2010年4月からは申請時に窓口で保険証の提示も求めていますが「提示できないことで資格変更や期間更新を不許可とすることはない」との立場でした。 l 今後は、社会保険料を滞納している外国人には在留を認めない方向になると思われますが、そもそもこの扱いは、2010年当時、「社会保険料の支払の有無で在留資格を判断すべきでない」と主張した公明党が当局に働きかけて、ガイドライン化したもの。今回、公明党がどう動くのかが注目されます。 l このほかにも、「母国にいる扶養家族を、日本の健康保険の適用対象から外すべきだ」とか、「外国人配偶者の年金受け取りを制限すべき」など、外国人に厳しい措置が続出。ただ、在留外国人に「年金保険料」を支払わせることの理不尽さについては、誰も指摘していないようです。
昨年、学校関係者の間で話題になった動画があります。動画には、教室の後ろで留学生10数人が集まり、ポーカー賭博に興じている様が映っていました。教室の前方では授業が行われているのですが、机の上には1000円札や小銭が無造作に置かれていて、前を向いて授業を聞いているのは女子生徒1人だけ。驚くなかれ、これじつは、ある専門学校の授業風景だというのです。日本語学校では、出稼ぎ目的の「偽装留学生」が横行しており、「学校が違法労働に加担している」と糾弾しているジャーナリストもいます 法務省は「日本語教育機関を、日本語学習を目的とした本来の姿に戻していきたい」として、10月から設置基準を厳格化しますが、この措置は、留学生のためというよりも、法務省自身のため。日本語教育機関は、大学や専門学校と違い、法務省が定めた授業時間や教員数などの基準を満たした場合に設置が認められて告示される教育機関で、法務省の支配下にある大事な権益。日本語教育機関は、私立大学の数よりも多い約680校になっているのですが、これからこの権益を巡って、文部科学省との壮絶な争いが始まります。 【Timely Report】Vol.192(2018.6.28)より転載。
l 10月12日、新しい在留資格の骨子が公表されました。対象となるのは、「不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」とされています。候補に挙がっているのは、農業、介護、飲食料品製造業、建設、造船・舶用工業、宿泊、外食、漁業、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造、電子・電気機器関連産業、自動車整備、航空の14分野と言われていますが、これら以外の業界は黙っていません。自民党も、来年度は、統一地方選(4月)や参院選(7月)がありますから、業界からの要望を無下にはできないでしょう。 l 法務省は、年内にも省令で対象分野を決める見通しで、「公的な指標などを用いて人手不足の程度を調べる」と語りますが、まずは、政治主導で対象となる業界が決定され、その業界が対象となるように、有効求人倍率などの指標が選択されると見るべき。各業界は、今回落ちたとしても、次回の選抜で選ばれるように、自分の業界に有利な線引きを勝ち取ろうと鎬を削ります。 l 今回、「特定技能」に選ばれる業界の顔触れを見れば、どの業界が自民党に強いのか、自民党がどこを向いているのかがわかります。
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